0309



「ありがとうございます10代目!」
「うわ!?」
 視界に、花弁のアップ。
 玄関を開けた途端、鼻先に花束を突き出されてツナは面食らう。
 視線を上げると両手いっぱいの花束を抱えている獄寺が見えた。
「おはようございます」
 満面の笑みで、意気揚々。
 ……薔薇の花束って高いんじゃなかったっけ?
 またこの人はこういう妙な買い物するんだからどうしよう。
 まず母さんに花瓶出して貰って──って違う。
 ありがとう?
「おはよう。オレ、君になんかしたっけ?」
 軽く混乱しているツナに、
「いえ、今日は10代目の日なんですよ」
 と獄寺。何を言ってるんだこの人。
 ツナが見つめると獄寺はへらっと笑顔。
 つられて笑ってしまうが困る。オレの日って何。
「オレ誕生日じゃないけど?」
「もちろん知ってます」
「だよね」
「10代目、今日は何月何日かご存知ですか!?」
「さ……さんがつここのか、だっけ?」
 疑問符だらけだなオレ。
「そうです。わかりませんか?」
 わかるもなにも、意味がわからない。
 けど獄寺はわくわくとツナの解答を待ってる。
「……な、なんかの記念日だっけ?」
 ボス感謝の日とか……主従の日?
 マフィア記念日だったら嫌だな。
 ツナの解答に待ちきれなくなったのか、獄寺が口を挟む。
「では10代目には特別にヒントをさしあげます。掛け算です」
 九九? 3と9。
 ってことは、
「さんく、にじゅうひち? ああ」
 27。
 ……だじゃれだし。
 だから10代目の日です、とか言うつもりなのか強引な。
 正直、記念日とかどうでも良い。
「あのさ、それより玄関先で花束挟んで男二人って恥ずかしいし、もう」
 すると獄寺は悪戯っぽい笑み。ツナの耳許に囁く。
「サンキューツナ」
「!」
 に、と笑う獄寺。
「でしょう? もうちょっとしっかり準備できたらよかったんですけど、さっき気付いたんで居ても立っても居られず飛んできました。今日10代目に感謝したの、オレが一番ですよね!」
 得意げに語る獄寺に対してツナは沈黙。
「……10代目?」
 獄寺はフリーズしてしまったツナを心配そうに覗き込む。
「もういっかい、いい?」
 とツナ。
「なにをです?」
「今の記念日、もう一回言ってみてよ」
「……サンキューツナ?」
 うわ。
「……呼び捨てだ」
 とツナ。
「え?」
「君にツナって呼ばれたのは初めてかも」
 ツナの呟きに今度は獄寺がフリーズ。
「……げ」
 つぶやく。
「げ、ってなんだよ」
 笑いながら突っ込むツナ。
「違います10代目! オレが10代目を呼び捨てにするなんて恐れ多い!」
「いや言ったでしょ」
「げ、幻聴です」と言い澱んで、「くっそ山本め」
「やまもと?」
「あいつから教えられたんです! 10代目が喜ぶから言ってやればとか軽く言いやがって、ちったあ見直してやったのにひでえ陰謀です!」
 首を傾げるツナ。
「自分で気がついたって言わなかったっけ」
「うっ」獄寺は涙目。「すんません」
「……別に謝らなくても。あ、それちょうだい」
 何故か機嫌良く花束を受け取ったツナに、獄寺は腑に落ちない表情。
「と、とにかく。ありがとうございます」
「どういたしまして?」
 答えてツナは、ふと笑う。
「甘い香りにくらくらするね」



とりあえず3月9日にアップした達成感。ブログの方だったけど
ツナ獄さんか獄ツナさんで既にどこかでやってそうだ
と思いつつ世界をよく知りませんオススメ獄ツナ教えてください